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バンコク 消えた空港の人混み

2020年05月17日

 駐在しているバンコクで2月上旬、出張のため空港に足を踏み入れた。何だろう。いつもより静かだ。

 チェックイン、手荷物検査、出国審査。ほぼ待ち時間なく、搭乗エリアまでたどり着いた。外国人旅行者数が世界トップ級の都市バンコクで、これは珍しい。

 「中国人が本当に少ないわ」と手持ち無沙汰気味の免税店従業員。免税品受け取り窓口に中国人旅行者が列をなす恒例の風景が消えた。新型コロナウイルスの感染拡大で、中国政府が国外への団体旅行を禁止した影響は明らかだった。

 翌週の帰国時も入国審査がごく短時間で済み、異常さをふつふつ感じた。

 国内総生産(GDP)の約2割が観光業のタイ。外国人旅行者の約3割を中国人が占める。昨年以降、米中貿易戦争の影響で経済が減速傾向にある中、新型ウイルス問題が長引けば、深刻な打撃を与えかねない。

 日系企業が多数進出するタイの経済動向は、日本とも関わりがある。行列に並ぶのは好きではないが、今は空港の人混みと騒がしさが懐かしい。 (北川成史)