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米トレド 縁結んだ支持者集会

2020年06月04日

 米オハイオ州トレドで開かれたトランプ米大統領の今年初の支持者集会。「日本の記者だ」と名乗り取材していると、ある男性(62)が問わず語りに亡くなった父親の話を始めた。米空軍に所属し1946年に沖縄に配属。硫黄島で戦った同僚が洞窟で見つけた貯金通帳や軍隊手帳など旧日本兵の遺留品を米国に持ち帰った。10年前に亡くなる直前、遺品返還運動に取り組むトレド在住の日系の医師に託し、通帳は遺族の手に戻った…。

 聞いたことがある話だなと思い調べてみると、三重県出身の加治安彦さん(86)が始めた遺留品返還運動だと確信した。昨年10月にも東京新聞を発行する中日新聞に、加治さんの志を継いだグループが、グアムで戦死した兵士の写真を名古屋市の遺族に届けた記事が載っていた。

 加治さんの連絡先を調べて電話してみると「確かに私です」と驚いた様子で話してくれた。「遺族はもちろん、遺品を持ち帰った米国人や家族もそれが返還されることを望んでいます」。戦後75年、日米の草の根レベルで進む和解の試み。それを知るきっかけをまさかトランプ氏が与えてくれるとは思ってもみなかった。 (岩田仲弘)