2020年06月05日
ソファに寝転んでノートパソコンを触ったり、軽食をつまみながら仲間同士で意見を交わしたり。パリ市内にある世界最大のスタートアップ支援施設「ステーションF」。耳に入ってくるのは英語が多く、フランスにいるのを忘れそうになった。
2017年、有力起業家が私財330億円を投じ、仏国鉄の施設を改修して整備した。新興企業約1000社が入る。約3割が外国人で、平均年齢は27.3歳。確かに施設内は国際色豊かで、若者が圧倒的に多い。起業大国になりつつあるフランスを象徴する施設だ。
「改修にあたり、まず起業家たちの生活習慣や文化を研究した」と設計した建築事務所のジャン・ミシェル・ウィルモット氏は言う。24時間いつでも仕事ができ、他の起業家や大手企業、投資家と交流できる。優秀な人材に来てもらうため、使いたいと思える施設を意識した。
日本では愛知県が同種施設をつくる。「建物は成功の秘訣(ひけつ)なんだ」と言うウィルモット氏。県は多くの機関と連携する態勢を整えているが、まずは使いやすい場所かどうか。パリの施設は、起業家目線の大切さを示している。 (竹田佳彦)