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豪カンガルー島 悲痛な姿 人間に警鐘

2020年05月04日

 「ハイウエー」といっても片側1車線で、中央分離帯や道路脇の柵はない。交通量は少なく、車は時速約100キロで飛ばす。

 コアラやカモノハシなど「固有種の宝庫」と呼ばれるオーストラリア南部カンガルー島。温暖化を一因とする昨年以降の森林火災で、東京都の広さに相当する島の半分が焼けた。

 車窓越しの光景は痛ましかった。黒焦げの木々を背に、島を貫くハイウエー脇で息絶えた動物たち。主に交通事故死とみられる小型のカンガルーやフクロギツネを度々目にした。

 島の動物を研究する北海道大の早川卓志助教に3枚の写真を送ると「動物の交通事故は豪州では身近だが、少し走っただけで3体も見つかるのは珍しいかもしれない」と驚きを交え、火災で森に棲(す)み処(か)をなくした動物がさまよい出た可能性に触れた。

 豪世界自然保護基金(WWF)は、島を含む同国各地で起きた森林火災で12億以上の動物が死亡したと積算する。交通事故や飢えなど「関連死」も含めたらどれくらいに上るだろう。

 温暖化も交通事故も、もたらしたのは私たち。社会の在り方を真剣に見直す時だと失われた命は訴えている。 (北川成史)