2020年05月03日

　「アジア人差別があるそうだけど大丈夫？」。欧州でも感染者や死亡例が出ている新型コロナウイルスによる肺炎の拡大に伴い、日本で暮らす知り合いから連絡があった。パリ在住の芸能人がブログで懸念を示し、話題になっていた。

　結論から言えば、個人的に嫌がらせや差別的な言動をされたことはない。ただ、擦れ違いざまの仏人がマフラーで口元を隠した、と話す日本人の友人はいる。中国出身者が経営する日本料理店は「出て行け」と落書きされる嫌がらせを受けた。不安は確実に仏社会に漂っている。

　確かに、外出時に周りにあらぬ不安を引き起こさないため、気は使う。地下鉄やバス内では、せき払いもしないようにしている。仏人はマスクをつける習慣がない。友人は「マスク姿のアジア人を見るとギョッとする」と打ち明けた。

　フランスでは、インフルエンザでも病院で診断を受けずに「単なる風邪」として自然に治るのを待つ人が多い。新型肺炎に感染しても、判明しない事例があっても不思議ではない。知らぬ間にまん延している恐怖。できる自衛策をとるしかない。　（竹田佳彦）