2020年08月07日
昼時、バンコク郊外の食堂前を通り掛かると、100人以上が列をなしていた。無償弁当のサービスだった。
タイでは「タンブン」という言葉をよく耳にする。功徳(ブン)を積む(タン)ことで、自分や家族の現世や来世の幸せにつながるという仏教の教えだ。僧侶への喜捨や、生活困窮者への施しは日常的。これほど根付いているのは、相手のためというよりも「自分に返ってくる」という考えに由来するからだとか。
コロナ禍による休職や失業で、生活に窮した人たちへの支援が広がっている。道端には、不要の日用品を置き、必要とする人が持ち帰れる棚もお目見えした。行列の食堂では連日、タイ風ラーメンのバミー700食分がはけるという。「収入はなくなったけど、食材が残っているし」と女性店主。もともと生活に余裕があるのだろうが「できることをやってるだけ」ときっぷよく笑った。
「せっかくだから、食べてって」。食事に困っているわけではなく、遠慮しかけたが、これもきっとタンブンだと受け止めた。飲食店の閉鎖が続いていたころ。できたての味は久しぶり。ニンニクが効いたスープが腹に染みた。 (岩崎健太朗)