2009年07月13日
韓国語には「さよなら」が2つある。行く人への「アンニョンヒ、ガセヨ(安らかに行ってください)」と残る人への「アンニョンヒ、ゲセヨ(安らかにいてください)」。相手本位のあいさつに温かみがある。
桜が咲く前、韓国勤務を終えた日本の知人たちが次々帰国した。その1人の同業者と偶然、北朝鮮の山や建物が見える、坡州(パジュ)市の統一展望台で会った。「もう何度も来たが、見納めのつもり」と少し照れていた。
北朝鮮を水源とし、南北を隔てる臨津江(イムジンガン)と、韓国を代表する漢江(ハンガン)が展望台の真正面で合流し、一緒に黄海の方へ流れてゆく。分断と融和を象徴するような風景は、なかなか雄大で見応えがある。
旅立つ人には特別な心の区切りが必要で、思い出の場所の再訪もその一つ。「アンニョンヒ、ガセヨ」の別れが重なった今春。以前は、ただ面倒と思った「さよなら」の使い分けに、不思議な奥深さを感じている。
(福田要)