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ロシア・沿海地方 トラもあきれる腐敗

2021年07月29日

 うっそうとした森が広がる。湿った空気は日本と似ていた。ロシア沿海地方のウラジオストクとナホトカを結ぶ幹線道。タクシーから降りて休んでいると運転手が出し抜けに言った。「この辺りはトラがいるぞ」

 沿海地方に野生のアムールトラがすんでいることは知っていた。もし茂みからこっちを狙っていたら…。

 でもこの辺りの住民たちは、トラを怖がらないらしい。トラは集落に近づき、家畜を襲うことはあっても人を狙うことはないとのこと。

 タクシーは再び走りだす。

 「むしろ問題はこっちだ」と運転手は前方を指さす。幹線なのに道が工事中で、アスファルトが延々とはがされている。砂利道だから速度を抑えても揺れがひどい。おまけに片側通行で大渋滞。

 地方政府は「財政難で道路舗装の予算がつかない」と言うが、住民たちは「役人や政治家が工事費を懐に入れている」とうわさする。さもありなん。

 「苛政(かせい)は虎よりも猛(たけ)し」と言ったのは中国の孔子だ。今日まで変わらない権力の腐敗構造に、トラたちは森の奥であきれているかも。 (小柳悠志)