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北京 パトカーで故宮入り

2021年09月17日

 北京の世界遺産「故宮」に、妻と小学5年生の長男と訪れた。

 故宮は明、清時代の皇帝の宮城だ。観光客は通常、南側の天安門の下をくぐって入り、北側の門から出る。天安門近くでは検問があり、荷物や身分証の検査が行われていた。

 数人の警察官が、のんびりとした様子でチェックしていたが、私のパスポートに貼られた記者の査証(ビザ)を見た瞬間、表情が変わった。「故宮観光は問題ないが、記者を天安門に近づけることはできない。ここを通せない」と警察官。「以前は記者でも入れたはずだ」と反論し、押し問答になった。

 しばらくやりとりした後、「分かった。別ルートで案内する」と告げられた。白い車体に「公安」と書かれた中国式「パトカー」の後部座席に親子3人で乗せられ、天安門を通らない故宮西側の関係者入り口から中に入った。

 「外国記者を警戒しすぎだ」といら立ちを少し覚えた。だが、長男は中国でパトカーに乗るという奇妙な体験に、思いのほか喜んでいた。その様子を見て、「せっかくだから故宮観光を楽しもう」と思い直した。 (坪井千隼)