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ロンドン 恥ずかしかった空耳

2022年04月21日

 多国籍の移民が集まる街ロンドン。近所のスーパーで先日、精算時に南アジア系の女性店員から「マスクを外せ」と無言でジェスチャーされた。「なぜ?」と目で訴えると、かごのワインを指している。年齢確認と気付くのにしばらくかかった。

 英国では酒が買えるのは18歳以上。こちらは成人歴30年、どうみても不要でしょう、と心でつぶやきながらマスクを外すと、店員はにこりともせずに数秒間見つめた後、黙ってワインをスキャンした。

 後日、知人と職場近くの地中海料理店でこの話をしたところ「東洋人は若く見えるらしいけど、さすがにないよね」と笑い話に。規則に厳格なのかも、などと話していると、南欧か中東系の男性店員が注文を取りに来た。ワインと肉料理を頼むと、私だけに「ID?」と店員。またかと苦笑しながら、取ったばかりの英国の運転免許証を見せようとすると「ノーノー」との返事。よく聞くと「エニシング(他にご注文は)?」のなまりを聞き間違えていた。

 コミュニケーションは面白くて難しい。自意識過剰の空耳に赤面しつつ、来た赤ワインをぐっと飲み干した。 (加藤美喜)