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ニューヨーク 分断あおる凶行の罪

2022年08月15日

 アジア系住民へのヘイトクライム(憎悪犯罪)が多発するニューヨーク。その関連取材で、2月に面識のないホームレスの男に刺殺された韓国系女性クリスティーナ・ユナ・リーさん=当時(35)=が暮らした地区を訪れた。

 リーさんは仕事帰りに後をつけられ、自室に侵入されて被害に遭った。そのアパートは当時と変わらぬ外観だったが、かたわらの電柱にリーさんの顔写真入りの張り紙を見つけた。いわく「無実の犠牲者は、ホームレスによって残酷に襲われた」。行政が付近に計画するホームレス一時避難所の建設に反対する地域住民の訴えだった。

 この街で生きる同じアジア系住民として人々の不安はよく理解できる。日本人の被害も報告されている。張り紙によると、予定地は学校に近いそうだ。

 ただ、ホームレスの圧倒的多数も静かに日々を送る人々だ。新型コロナウイルス禍で失業したり、働いてはいるが上がり続ける家賃に追いつけない人も多い。ヘイトにおびえる住民とその日の屋根を求める人々。その分断を広げたとすれば、リーさんの命を奪った凶行はなお罪深い。 (杉藤貴浩)