2022年09月12日

　映画やゲームでもおなじみの中国の伝統衣装、チャイナドレス。中国語では「旗袍（チーパオ）」といい、最後の王朝の清を築いた満州族の民族衣装が基だ。現在は街中で見かけることはほぼないが、最近思わぬところで出くわした。

　６月上旬、中国の大学統一入試が行われた北京の会場。高校生が緊張した面持ちで試験に臨む中、応援に来た人たちの中に旗袍を着た母親らがいた。

　「恥ずかしいけれど、娘の勝負の日に私も気持ちを入れたかった」と母親。中国では近年、旗袍を着て受験生を応援する母親や教師が増えているという。「旗」の文字が「軍旗を開き勝利する。速やかに成功する」という意味の中国の故事成語「旗開得勝（きかいとくしょう）」に通じるからだ。

　河南省では、高校の男性教師が女性教師と一緒に旗袍を着て受験生を激励。がっしりした体格のおじさんたちのチャイナドレス姿の動画が話題となり、ネット上では受験生から「緊張がほぐれた」「素晴らしい先生たち」との声が上がった。

　中国の受験競争は日本以上に苛烈だ。子を思う親や先生の心は、国を問わないのだと改めて感じた。　（坪井千隼）