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北京 通行人からお悔やみ

2022年10月07日

 「日本の方ですか。今日はとても悲しい事件がありましたね。お悔やみ申し上げます」。安倍晋三元首相が銃撃され死亡した7月8日、北京の路上で知人と日本語で立ち話をしていたところ、見知らぬ通行人の女性に急に声をかけられた。

 事件は中国でも衝撃をもって受け止められた。新聞やテレビは大きく報道し、ネット上の検索ワードでも上位を占めた。

 中国メディア記者の知人は、「安倍氏は、中国で最も有名な日本の政治家の1人。ただ一般の国民にとっては、中国に厳しい『反中政治家』の代表格の印象が強かったと思う」と語る。

 首相在任中は4度にわたって訪中し、日中関係改善に向けた姿勢が目立ったものの、退任後は靖国神社に参拝したり、「台湾有事は日本有事だ」と発言したりしたことなどが、中国人の神経を逆なでしたという。

 「正直、安倍氏のことは嫌いだった。でも立場や国が違うので、意見が異なるのは仕方がない面もある」と知人記者。「あんな死に方をするのは、あまりにかわいそうだ」とこぼした。政治的な対立はさておき、悲惨な事件に胸を痛める市民は少なくないようだ。 (坪井千隼)