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アルメニア・エチミアジン 面食らう水かけ祭り

2022年11月10日

 黒海とカスピ海に挟まれたアルメニアは、世界初のキリスト教国とされる。首都エレバンの西にエチミアジンというアルメニア使徒教会の総本山があり、出張の合間にこの地のカフェで記事を書いていた。

 外に目をやると、半裸の青年や、びしょぬれの女性たちが行き来している。何事かと思っていると知り合いのアルメニア人からメールが。「今日は水かけ祭り。気を付けて」。外に出た瞬間、悪童たちがバケツや水鉄砲で水をかけてきた。アパートのベランダから水の入ったビニール袋が落とされる。外国人や老人に対しても、お構いなし。

 私以外に面食らっていたのがエチミアジンの観光地を回っていたロシア人たち。ロシアのウクライナ侵攻が始まってから、数万を超すロシア人が自国の政情を嫌ってこの地に逃れてきている。女性たちは悲鳴を上げているが、お祭りに巻き込まれるのは、まんざらでもない様子。

 水かけ祭りはキリスト教と土着の水神信仰が交じり合って生まれた。水を浴びるほど厄が払われるという。ウクライナ侵攻後に祖国を離れ、あてのない生活を送るロシア人たちの運も上向けば良いが。 (小柳悠志)