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タリン ロシア人抜きXマス

2023年04月02日

 エストニアの首都タリンで、クリスマスムードは年明けまで続く。東方正教やカトリックなど複数の宗派が入り交じる国ゆえに、クリスマスを祝う日付にばらつきがあるためだ。

 古い街並みの中でロシア大使館を見つけた。建物に沿って、たくさんのプラカードが掲げられている。「ウクライナの子どもを殺すな、プーチン(大統領)よ」「ロシア人は戦争を前になぜ黙る」。産着や遺影も貼られていた。侵攻への抗議だ。

 エストニアはかつて、ロシアを盟主とする旧ソ連に力ずくで併合された。ロシアは以前から嫌われ者。昨年、ロシア軍がウクライナに侵攻すると、「ロシア憎し」の感情は強まった。今ではロシア人の入国は原則禁じられている。

 皮肉にも、街でよく耳にするのはロシア語。エストニアはウクライナ避難民を大量に受け入れてきた。多くの店でウクライナ人が働き、皆が旧ソ連圏の共通語、ロシア語で理解し合う。

 でも、ロシア人だって、タリンで街歩きを楽しめていたはずなのに。モミの木の周りで、クリスマスソングをともに歌えたはずなのに。そう、侵攻さえしなければ。 (小柳悠志)