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仏リルサンドニ 五輪迎える街の課題

2022年11月04日

 パリのシンボルのセーヌ川は市外へ出ると蛇のようにくねくね曲がって北西へ流れていく。パリ市の北にあるリルサンドニ市は川の中州だけで構成され、市域の形もまさに蛇のようだ。

 開幕まであと2年を切ったパリ五輪では、この小さな街に選手村の一部ができる。選手村の見学事務所の職員によると、かつては橋が少なく市外へ出るのが不便なので「見捨てられた街」と言われていたが、選手村建設に合わせ新しい橋ができるのでアクセスが良くなり、住宅の人気が上がっているという。

 五輪で練習会場になる中州の先端の運動場を見学しに行くと街の雰囲気が変わって老朽化した集合住宅が目立った。その一角にある商店の前では平日の日中なのに若者たちがフラフラとたむろし、周囲には鼻を刺激するにおいが立ち込めていた。

 「麻薬の密売人だよ。五輪の選手たちには見せられない光景だ」。近隣住民のクリストフさん(62)が顔をしかめた。彼らが住む集合住宅は解体される計画だが、巨費のため実現が危ぶまれているという。仏郊外都市の諸問題を象徴するようなこの場所は、このまま開幕を迎えてしまうのだろうか。 (谷悠己)