2021年09月08日
「中止すべきだったか? そんなこと考えたこともないよ。こんな状況下でも日本は素晴らしい大会を開いたじゃないか」
今月8日、東京五輪の閉会式を中継したパリのパブリックビューイング(PV)会場で、ローラン・ブイエさん(60)は「何でそんなことを聞くのか」と言いたげな表情で答えた。
日本の世論とは対照的に、五輪期間中にパリで取材した人のほとんどが大会開催に肯定的だった。次回夏季五輪の開催国だからという理由とともに、新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、かつてのような生活を送れる機会が増えてきていることが大きいように思う。
閉会式中に中継映像で流れたように、PV会場では密集した観衆が熱狂していた。無観客だった今大会との明暗を感じ、複雑な感情が込み上げてきた。
パリ五輪は「脱炭素」を掲げ、既存施設や緑を生かした会場造りを進めるという。東京がそうだったように、パリも街の形が変わっていくのだろう。あと3年。その過程を純粋に楽しむことはできるのだろうか。もう、今回のように開催の是非論が戦わされる事態にはなってほしくない。 (谷悠己)