【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. ヨーロッパ
  5. ワルシャワ 蜂起の誇り 今も高く

ワルシャワ 蜂起の誇り 今も高く

2022年11月14日

 夏休みでポーランド各地を旅行した。最終日のワルシャワでは、あちこちで第2次世界大戦の兵士やレジスタンスのコスプレをした人たちを見かけた。国旗を売る露店も多く、まるでお祭りのにぎわい。タクシーに乗ると「今日はワルシャワ蜂起の記念日だよ。交通規制で行けないところが多いよ」という。

 1944年8月1日、当時のナチス・ドイツの支配に対して、ワルシャワ市民が蜂起。しかし、支援するはずのソ連は傍観し、孤立した蜂起軍は2カ月で鎮圧された。街は徹底的に破壊され、20万人が殺害された。

 悲劇の歴史を伝える蜂起博物館では、蜂起に際しての当時の市民の高揚ぶりと、徹底抗戦の意志が伝わってくる。ある外交官は「ナチスに抵抗せず、戦火を逃れて美しい街並みを保った他国の都市からは、ワルシャワ蜂起は無謀だったと見下されている。でも、市民は蜂起の歴史を誇りに思っている」と話す。

 戦後、市民は、破壊された街をひびの1本に至るまで忠実に復元。旧市街は世界遺産に登録された。隣国ウクライナのロシアに対する現在の不屈の戦いにも思いをはせながら、黙とうをささげた。 (加藤美喜)