2022年11月17日
「もう遅いから、出歩かないで」。喉を潤そうと、滞在中のホテルで最寄りの店を尋ねると、制止された。まだ午後8時過ぎ。玄関から、ダウンタウンの通りに目をやると、確かに歩いているのは野良犬だけだった。
2年半ぶりに訪ねたヤンゴンの街は、一見、変わりなく映った。朝、すし詰めのバスから押し出され、職場に向かう人波。昼間から屋台でジョッキを傾ける男たち。週末のショッピングモールは、家族連れやカップルでにぎわいを増していた。
ただ、目を凝らすと、街中で銃を携えた兵士や警官が威圧感を発していた。カメラを構え、通行人に声を掛けることすら憚(はばか)られる。観光客はほぼ見当たらず、名所のパゴダ(寺院)も地元民がまばら。ホテルのマネジャーのナンダさん(41)は「毎日30組の予約があったが、今はせいぜい5組」。夜は強盗か、警官か兵士のしわざか分からないが治安は悪化の一途という。
新型コロナウイルス禍が鎮まりホテルも再開にこぎ着けたが「一難去っても、また。いつ抜け出せるのか」。恐怖に支配されたわけを表立って口にしなくとも、愁いを帯びた目が多くを物語っていた。 (岩崎健太朗)