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北京 運転手 愚痴る一方で

2022年11月21日

 ある週末の夜、北京郊外から帰宅する時に乗ったタクシー運転手が、愚痴っぽくなってきた。オシャレなサファリハットをかぶったイケメンの35歳。「いい年になって離婚して、子どもは妻に付いていった。俺には何も残っていない」と言う。

 河北省の農村出身。義務教育の中学校にも通わなくなり「知人に誘われて上海でぐれん隊をやった」と振り返る。18歳の時、別の知人の影響で陸軍に入隊。8年間、人格をたたき直されたのが社会復帰の転機になり、退役後は消防隊に入った。

 地元には職が少なく、友人のほとんどが出稼ぎ生活。月給4万5000円の消防隊員も悪くないが、別れた妻は実家のある地域が政府開発の対象となり、一夜にして多額の財を得たという。

 生活を変えようとタクシーに乗り始めて17日目。「中国では自分が生まれた社会階層や集団から抜け出すのは難しい」とこぼす。一方で、習近平(しゅうきんぺい)国家主席について聞くと「99%の中国人が大好きに決まってるだろ。腐敗を撲滅してくれた。批判する1%は自分が腐敗しているヤツらだ」と熱く語る。習氏は社会への不満を解消してくれる存在のようだ。 (白山泉)