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ワシントン 国葬は望まなかった

2023年01月11日

 エリザベス英女王の死去などで、国葬関連の取材を米国でも進めていたら、米大統領の葬式について研究する専門家がいるというので、話を聞いた。

 東部ニュージャージー州のウィリアム・パターソン大学で教壇に立つルイス・ピコーン客員教授。「大統領が死んだ」という本の著者でもある。

 ピコーンさんは歴代大統領の出自についての本を書くうち、葬式にも個人の人柄が出ていることに魅力を感じ、研究を始めたという。

 最初に国葬が行われたのは9代大統領ハリソンだった。1841年、68歳で大統領に就任し、在任中に死亡したため、国葬に付された。それまでは歴史に名を残す偉人たちも個人葬だった。

 もともと初代大統領のワシントンが国葬を望まなかったのは、「自分は国民の中の一人であり、皇帝や君主とは違う」という思いがあったからだという。

 「現代の大統領の盛大な国葬を見たら、彼は驚くでしょうね」。ピコーンさんの言葉は、大国となった米国で建国時の美徳が少しずつ失われることの寂しさのように聞こえた。 (浅井俊典)