【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. 韓国
  5. ソウル 日本人街の小児科医

ソウル 日本人街の小児科医

2023年01月10日

 韓国駐在の日本人の家族が多く暮らすソウル市龍山(ヨンサン)区二村(イーチョン)。「リトル東京」とも呼ばれるこの街の一角で、小児科医の李敏在(イミンジェ)さん(63)は2004年に医院を開業して18年になる。

 「どこが痛い? おへその上かな」「せき止めと解熱剤を処方します」。幼い患者や親に日本語で声を掛け、腹や背中を丹念に触診する。

 流ちょうな発音を聞き、留学経験があるのだろうと勝手に想像したが、違った。ソウルの大学病院に勤務していた1990年代に多くの日本人患者に出会い、日本語のレッスンを受けるようになったという。

 近年、日韓関係の悪化や新型コロナウイルス禍などで、医院を訪れる日本人患者も以前の半数以下に激減。趣味にしてきた日本旅行もできないが、日本語の力を維持するため、芥川賞受賞の小説を読むなど地道な努力を続ける。

 一男一女を育てた母親でもある。「異国でわが子が病気にかかった親の不安な気持ちが分かる」。治療方針を日本語で説明し、安心してもらうことに、やりがいを感じる。日本人街の主治医として信頼を集めている。 (相坂穣)