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ニューヨーク バリアフリーと国連

2023年01月19日

 「今度、国連本部の前でアピール行動をするから見に来てくれませんか」。以前、障害者差別について取材したニューヨーク在住のマーク・サフマンさん(52)からメールが届いた。文面は「国連は世界の盲ろう者を助けられる力を秘めているから」と続いていた。

 約束の時間に足を運んでみると、本部ビルの前にサフマンさんがいた。視覚と聴覚に障害があるため、道行く人に声はかけないが、障害者の権利を記したプラカードを持ち、無言の訴えを続けている。

 日本の友人に教えてもらったという片仮名で「アクセシビリティ(使いやすさ)」とも書きこみ、障害者にやさしい電子機器などの普及を願う気持ちを込めた。「国連は2030年までに障害者を社会が完全に受け入れる目標を掲げている」とサフマンさん。

 ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮問題など、国連の取材は戦火の行方や安全保障が中心になりがちだが、人々が分け隔てなく暮らせる未来も世界平和の一つの形だ。たった一人でプラカードを持ち続けるサフマンさんが、大切なことを思い出させてくれた。 (杉藤貴浩)