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ソウル 感覚惑わす鉄道事情

2023年01月30日

 自動車は左ハンドル、右側通行の韓国の交通に慣れてきても、鉄道に関してはいまだに感覚が狂う。ソウルの地下鉄は右側通行が基本だが、1号線だけは日本と同じ左側通行。地方とを結ぶKTX(高速鉄道)も左側通行で、全体的に「ホームのどっちから電車が来るか」が紛らわしいのだ。

 そのわけは日本統治時代と関係がある。ソウルと仁川(インチョン)を結ぶ京仁(キョンイン)線をはじめ、日本の影響下で敷設された幹線は左側通行。解放後、米軍政の影響で車は右側通行になったが、既にあった鉄道を左右逆にするのは難しいらしい。1974年に開業した地下鉄1号線は、京仁線に接続するため左側通行になった。

 そんな歴史がある地下鉄1号線に乗って仁川に向かっていたとき。外で雨が降り始めるのを待ち構えたように、年配の男性がレインコートを積んだ手押し車とともに現れて「車内販売」を始めた。

 韓国の地下鉄でこうした行商人は昔からおなじみだったが、実は違法行為。最近はめっきり見なくなっただけに、タイムスリップしたような錯覚を覚えた。1号線にはやはり感覚が惑わされる。 (木下大資)