2023年02月02日
モスクワの「文化公園駅」近くに、ウクライナに戦闘兵を送るための「動員センター」が設けられた。
リュックを背負った青年たちが門をくぐっていく。招集令状はB5ほどのサイズ。真っ白な紙にはんこが押されている。ロシアは最近、対ロ制裁で漂白の薬品が手に入らず、黄ばんだ安物の紙を使うことが多い。白い紙がまぶしかった。
「せがれを見送りに…」と守衛に声を掛け、門の中に入れてもらうおじいさん、おばあさんも。動員兵の妻だろうか、赤いコートの女性が泣いていた。泣くことしかできないだろう。動員は最高権力者の命令だから。
どこか既視感のある光景だった。NHKの番組「映像の世紀」とそっくり。目の前の人々が、第二次大戦の欧州で戦地に駆り出されていく兵士と重なった。時計の針が80年前に逆戻りしたようだった。
通行人の女性たちは、私を徴集されたアジア系ロシア人と勘違いして「気の毒に」というまなざしを向ける。でも、あなた方もひとごとではないですよ。動員の最終段階では女性も駆り出されると、法律に明記されていますから。 (小柳悠志)