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米バトンルージュ 銃による平等なんて

2023年02月05日

 米留学中にパーティーの訪問先を間違え、家主に射殺された服部剛丈(よしひろ)さん=当時(16)=の事件から30年となった10月、現場の南部ルイジアナ州バトンルージュを訪ねた。今も米国を悩ます銃問題取材のため、射撃練習場に出入りする客から聞いた一言が今も頭を離れずにいる。

 「銃はイコライザーなんだ」。イコライザーとは、人や物同士の関係を平等にするものという意味。そう言った中年の男性客は「力の弱い人や女性だって、銃さえあれば暴漢と対等に立てるだろ。それが銃の大きな役割だ」と続けた。

 銃の数が人口よりも多い米国。自らも武装して身を守る必要があるという意見は、時としてまっとうに聞こえる。ほかには「銃が悪いのではない。悪事に使う人間が悪いのだ」という声も聞いた。これも字面だけ見れば、その通りかもしれない。

 だが30年前、好奇心で胸を膨らませた一人の若者の未来を奪ったのも銃だ。そこに「銃による平等」はない。悪事に使うつもりはなくとも、人は間違いを犯しうる。「貴重なご意見ありがとう」。そう言いながら、練習場に散らばる無数の薬きょうを見つめた。 (杉藤貴浩)