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ニューヨーク 過剰な「ブレス・ユー」

2016年01月28日

 初めてのニューヨークの真冬を控え、風邪予防にも注意が必要な季節を迎えた。

 米国でくしゃみをすると、周囲の人から「Bless you(ブレス・ユー)」と声を掛けられることがよくある。直訳すると「神のご加護を」という意味だが、日本語では「お大事に」というニュアンスだ。

 由来を調べてみた。諸説あるが「くしゃみをすると魂や幸せが抜け、悪いものが入り込む」という言い伝えがあり、神の恵みで「いいものが体に戻りますように」と気遣う意味が込められている、という説明が多かった。日本にはない感覚だが、思いやりを示す言葉として、自分も使うようにしている。

 ところが先日、帰宅途中の電車内でのことだ。自分の隣席に座った白人男性のくしゃみが止まらなくなった。すぐ後ろに座っていた男性は、そのたびにわざわざ身を乗り出して「ブレス・ユー」を連発。最初は「サンキュー」と返していたくしゃみの男性も、気まずい表情で黙りこくってしまった。

 まるで漫才の掛け合いを見ているようで笑いをかみ殺していたが、やはり過度な気遣いは禁物のようだ。 (東條仁史)