2023年03月10日

　高騰する暖房費の節約のため、ロンドンでは昔ながらの暖炉を見直す人が増え、煙突掃除屋さんが引っ張りだこだ。取材に応じてくれたジョシュさん（３４）は、１７歳からこの道一筋。指定の住宅街に行くと、気温８度の中、半袖１枚で待っていた。「全然寒くないよ。いつも汗だくになるんだ」。午前中だけで４軒の掃除を終えたという。

　笑顔で握手してくれた手は、汗でしっとり。商売道具の大きなブラシを見せながら、仕事の醍醐味（だいごみ）を熱く語ってくれた。

　かつて「霧の都」と呼ばれたロンドン。その実情は各家庭の暖炉で大量の石炭を燃やしたスモッグの霧だった。しかし今は石炭は消え、薪や無煙燃料に変わった。ジョシュさんは「ガスより安く、地球環境にもいい」と暖炉の見直しを歓迎する。

　煙突からは、子どもたちのサンタへの手紙や思わぬ隠し物も出てくるという。生き生きとした話に、ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」で煙突掃除人たちが「チムチムニー」と歌い楽しく踊る場面を思い出した。歌詞には「僕と握手すると幸運が移る」というくだりがある。貴重な握手に感謝し、彼の健康と活躍を願った。　（加藤美喜）