2023年04月05日

　子ども２人が通う中学校で先日、有志の生徒たちが演じるミュージカルを楽しんだ。演目は１００年余り前のニューヨークを舞台とした「ニュージーズ」。貧しい新聞売りの少年たちが、仕入れ価格の値上げに反対し、新聞社に対してストライキを敢行する物語だ。

　中学校の発表会とは言っても、校内の会場は１０００人は座れそうな大ホール。出演生徒の中には俳優の両親を持ち、自身もタップダンスで海外遠征するほどの芸達者も。終幕後には達成感で涙を見せる生徒もいた。

　わが子は出演しなかったが、実は劇に少しだけ貢献した。劇中で少年たちが売り歩く新聞紙は、わが家に毎朝届く「ニューヨーク・タイムズ」をためておいたもの。「なかなか実物が集まらなくて」という関係者に提供を頼まれたのだ。

　デジタル化が加速する米国では、紙の新聞が朝の庭先に置かれた家を見ることは珍しい。少し寂しい話だが、それでも情報を伝える大切さは今も昔も変わらないはず。劇中の路上で「大ニュースだよ」と声を張り上げ、わが家にあった新聞紙を振り上げる少年たちに、何だかこちらが励まされた。　（杉藤貴浩）