【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. ヨーロッパ
  5. パリ 不法移民と間違われ

パリ 不法移民と間違われ

2023年04月03日

 ある週末の朝、近郊都市へ出かけるため、パリのターミナル駅で特急列車に乗ろうとしたときのこと。指定席に続く客室の自動ドアが開かず、多くの乗客が通路で立ち往生していた。ドアを開けてもらおうとホームに戻って乗員を探したが、見当たらない。発車時刻も迫っているので改札口にいた駅員に連絡しようと階段を駆け足で下りていると、「止まりなさい」と叫ぶ声が聞こえ、気付くと屈強な警備員らに取り囲まれていた。

 慌てていたので改札口方面とは別の階段を使っていた。警備員は「改札口以外の場所から出ることはできない。モロッコ人でもチュニジア人でも中国人でも、誰でもだ」と、かたくなな態度。どうやら、不法移民と間違われたようだ。騒ぎに気付いた駅員に事情を説明し、切符を見せてようやく解放された。

 折しも、仏政府は野党に「移民管理が甘い」と批判され、厳格姿勢をアピールしている。「この警備体制もその影響か」と思いながら、やっと見つけた乗員にドアの故障を伝えると「手動に切り替えれば使えますよ。問題ないでしょう?」と、悪びれない返事。出発前からどっと疲れてしまった。 (谷悠己)