2023年05月24日
ロンドンから電車とバスで約6時間、英南西端コーンウォール州にある英国有数の漁業の町ニューリンを取材で訪れた。
魚市場には英国名物フィッシュ・アンド・チップスでおなじみのタラ類をはじめ、カレイや甲殻類、日本の食卓ではあまり見ない小型のサメもあった。魚市場の責任者ポールさん(47)は「このサメは皮をはぎ、厚めに切ってバターでソテーするのがお勧め。身がしっかりしてておいしいよ」と教えてくれた。
150年以上続く漁師の家庭で育ち、「子どものころから魚、魚、魚の人生だった」という。英国が欧州連合(EU)から離脱すれば「英国の漁場を独占できる。EUの船にもう魚を獲(と)られずに済む」と離脱派の政治家らに言われたが、結局は口約束だったと嘆いた。
離脱後の怒りと落胆を聞いた後、「私もここの魚を食べて応援したい」と言った。ポールさんは「本当に? それが1番うれしいよ」と笑った。その晩、地元のパブで食べたタラは格別だった。肉派寄りだったが魚派にもなるぞ。あの笑顔を思い出して、スーパーや飲食店に行くたびコーンウォール産を探している。 (加藤美喜)