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北京 届くのは賛美ばかり

2023年06月22日

 中国の国会にあたる全国人民代表大会が開幕した5日、北京では厳戒態勢が取られた。今年は異常な警戒ぶりで、道路沿いに立つ警官の数は例年より多く、立体交差点では巡回監視、陸橋はテープを張られて通れなくなっていた。中国では昨秋以降、習近平(しゅうきんぺい)政権を批判する横断幕が掲げられたほか、新型コロナウイルス対策「ゼロコロナ政策」や医療保険改革に対するデモが相次いで起きている。一大政治イベントを控えてこうした抗議活動を警戒したのだろう。

 物々しい雰囲気のなか、自転車で出勤途中、道路が一時封鎖されていた。開幕式に出席する全人代の代表団のためだろうか。中国では要人が移動する際に交通規制されることがしばしばある。その時、年配の女性が「一体どこの偉いヤツなんだ。ばかやろう」と大声を上げてガードマンに食ってかかり、封鎖を突破してしまった。

 オフィスに着いてテレビをつけるとインタビューに誇らしげに語る代表の姿が映っていた。庶民の声を代弁すべき立場だが、聞こえてくるのは政権賛美ばかり。彼らに道路封鎖されていら立つ年配女性の気持ちは分からないのだろう。 (新貝憲弘)