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少林寺拳法創始の地

少林寺拳法創始の地 香川県多度津町 威容誇る総本山に合掌

錬成道場を背に、合掌する冨田さん

錬成道場を背に、合掌する冨田さん

 もう30年になるのか。多度津駅に降り立って、ふいに学生時代を思い出した。大学体育会少林寺拳法部員だった私は、夏合宿で毎年、この町を訪れていた。開祖宗道臣(そうどうしん)が少林寺拳法を創始した地だ。駅から歩くと、少し坂を上って20分。仁王門や本堂、錬成道場などからなる金剛禅総本山少林寺は、当時と変わらぬ威容を誇っていた。

 名古屋市出身で法務課・総務課の冨田雅志さん(39)が敷地内を案内してくれた。最も早く建てられた施設、錬成道場は500畳の広さがあり、最近は主に大学生の春合宿で使われる。2~3月にかけて週に500人前後を受け入れ、4週合わせて2000人の学生が修練するという。道場に掲げられた額の文字は「力愛不二(りきあいふに)」。宗道臣が唱えた「力なき正義は無力なり。正義なき力は暴力なり」を意味する。学生時代に覚えた気がするなあ。

 本堂は600畳の道場を持ち、「拳禅一如(けんぜんいちにょ)」の額がある。冨田さんが「拳は肉体、禅は精神を表し、心と体をバランスよく鍛えるという修行についての心構えです」と説明してくれた。

金剛禅総本山少林寺で演武を披露する中川純さん(左)と冨田雅志さん

金剛禅総本山少林寺で演武を披露する中川純さん(左)と冨田雅志さん

 メインイベントは演武。道着の上に法衣を着た冨田さんと布教課の中川純さん(50)が、流れるようなリズムで蹴り、突き、受けなどの技を見せてくれた。私も昔、仲間と演武をした覚えはあるが、これほどの技のキレやスピードはなかった。夏合宿で覚えているのは、昼食で誰よりも早くご飯をおかわりするのを仲間と競っていたことくらいだ。われながらばかだった。

 全ての取材を終えて総本山を後にする際、冨田さんや中川さんが合掌して見送ってくれた。私も合掌で返した。久しぶりの合掌は少し照れくさかった。こうした施設見学は、一般の人でも可能だ。事前に申し込む必要はあるが、うまくスケジュールが合えば演武も見られる。

多度津町立資料館で町の歴史を説明する西山慶祐さん

多度津町立資料館で町の歴史を説明する西山慶祐さん

  多度津は人口2万3000人ほどの小さな町だ。江戸時代には多度津藩が置かれ、京極家が治めた。少し南にある金毘羅(こんぴら)(現・琴平町)参拝者の上陸港としてにぎわい、明治以降は鉄道や舟運の要衝として栄えた。このため、歴史的建造物も多い。

 そうした町の歴史を知るのに最適なのが町立資料館だ。西山慶祐(けいすけ)さん(33)ら担当者が、手作りの藩主家系図を使って解説してくれる。どこを歩いたらいいかも教えてくれる。観光名所は駅の西側に小さくまとまっているので、散策にはぴったりだ。

 同町は人口減少を食い止めようと、観光客や移住者を呼び込む方針を掲げている。最近盛んなのがリノベーション(大規模改修)だ。古民家を使った宿や総菜店があるほか、200年近く前に建てられた武家屋敷を改装した結婚式場「家中舎(かちゅうしゃ)」は3月にグランドオープン予定だ。

 ユニークなのが本通(ほんどおり)商店街にある「芸術喫茶 清水温泉」。大正末期から平成初期まで営業していた銭湯の建物を再利用した喫茶店で、湯船も座席として使っている。町政策観光課の植松肇さん(46)は「ここ2、3年で、本通はまたにぎわうようになった。特に清水温泉はインスタ映えするということでお客さんが来る」と話し、店主日高明道(ともみち)さん(54)も「活性化のため、地元の海産物や農産物を売るなど、この通りに道の駅の機能を持たせたい」と語る。

湯船を使った席に座る「芸術喫茶 清水温泉」の店主、日高明道さん=いずれも香川県多度津町で

湯船を使った席に座る「芸術喫茶 清水温泉」の店主、日高明道さん=いずれも香川県多度津町で

 地方の中心市街地の活性化は全国共通の課題だ。私が住む愛知県犬山市も、観光関係者の取り組みやインスタ映えする店舗の繁盛でにぎわいを取り戻した。多度津の成功を切に願う。

 文・写真 金森篤史

(2019年2月15日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
JR多度津駅へは山陽新幹線・岡山駅から特急で40分余。
金剛禅総本山少林寺まで徒歩20分。

◆問い合わせ
多度津町政策観光課=電0877(33)1116。
金剛禅総本山少林寺=電0877(33)1010

おすすめ

ひろ浜うどん

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香露軒(こうろうけん)

香露軒(こうろうけん)

★桃陵公園
小高い山にあり、見晴らしがよい。
公園のシンボルは「一太郎やぁいの像」。
日露戦争(1904~05年)の際、多くの将兵が多度津港から船で出兵し、一太郎を見送ろうとした母親が山から「一太郎やぁい」と叫んだ。
母性愛にあふれた姿を後世に伝えようと像が建てられた。

★鍋ホルうどん
牛肉が高価だった1950年代、町内の焼き肉店が旧国鉄の多度津工場の職員らに「安くてうまいものを」と鍋ホルモンを考案し、締めにうどんを入れたのが始まり。
現在はひろ浜うどん、平野屋などで食べられる。

★香露軒(こうろうけん)
築約100年の古民家をリノベーションし、2016年にオープンした宿。
1棟貸しで3~15人。1人5500円(税込み)。
3人未満は割高になるが宿泊可。
食事なし、キッチンあり。
電090(7144)6803 

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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