【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 世界文化遺産 久賀島
世界文化遺産 久賀島

世界文化遺産 久賀島 長崎県五島市 殉教の悲劇 語り継ぐ

1868年に起きた「牢屋の窄殉教事件」の場所に建てられた牢屋の窄殉教記念教会=長崎県五島市で

1868年に起きた「牢屋の窄殉教事件」の場所に建てられた牢屋の窄殉教記念教会=長崎県五島市で

 五島列島の1つ久賀島(長崎県五島市)は、世界文化遺産の島である。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として、島全体が「久賀島の集落」という名で登録されている。この面積約37平方キロの小さな島を巡った。

 五島列島の中心、福江島に前日に入り宿泊した。翌日、福江港から午前9時10分発の船に乗って30分弱で久賀島・田ノ浦港に着いた。まずは「久賀島潜伏キリシタン資料館」に行き、島の歴史を学ぶとしよう。

 18世紀の終わり、五島列島の大半を治めていた五島藩が開拓移民政策をとったことで、島外から潜伏キリシタンが移住した。もともと島にいた仏教徒と、農業や漁業で互助関係を築いて生活した。時代が明治の世になっても政府はキリスト教を禁じた上、島の信徒に弾圧を加えた。6坪(約20平方メートル)という狭い牢屋(ろうや)に約200人の信徒を8カ月間も押し込め、厳しい拷問で棄教を迫った。その結果、42人もの死者を出す悲劇に。1868(明治元)年の「牢屋の窄(さこ)殉教事件」である。
 
 

潜伏キリシタン弾圧で亡くなった42人の墓が並ぶ=長崎県五島市で

潜伏キリシタン弾圧で亡くなった42人の墓が並ぶ=長崎県五島市で

 この事件の地に足を運ぶと、亡くなった42人の墓があり、その前に殉教記念教会が立っている。内部は、牢の広さが分かるよう床のじゅうたんが色分けされている。ここに200人が押し込められた状況を想像して、寒けを覚えた。

 この弾圧に対して欧米諸国から抗議が巻き起こり、禁教政策は終わった。毎年10月の最終日曜日に、殉教者をたたえ島内外の信徒が集い「牢屋の窄殉教祭」が行われている。

 久賀島出身で兵庫県で長年暮らし、2009年に隣の福江島にUターンしてガイドをしている平山和子さん(70)は「この事件の後は、宗教の対立もなく、島民がそれぞれの人生を紡いできたことが素晴らしい」と語る。なるほど、この地域の歴史を振り返ると、紛争の絶えない世界を変える未来へのヒントを得たように感じた。

 「五輪(ごりん)」という海辺の集落に立つ旧五輪教会堂へも足を運んだ。木造のアーチが美しい。1881年建築の島内初の教会堂(初代浜脇教会堂)が1931年に建て替えられた際、この集落に移築され、85年まで使われた。来年の東京五輪を前に、五輪という名の地に来たのも何かの縁。ちなみに五輪集落は、歌手の五輪(いつわ)真弓さんの父親の出身地だそうだ。

島内初の教会堂(初代浜脇教会堂)が移築された旧五輪教会堂の内部

島内初の教会堂(初代浜脇教会堂)が移築された旧五輪教会堂の内部

 五島市には年間24万人の観光客が訪れるそうだが、久賀島ははっきり言って、観光地的なにぎやかさ、華やかさなどの要素は乏しいと思った。そこもまた、ある意味、島の魅力か。

 かつて4000人近くいた住人は、今は約300人に。65歳以上の人が人口に占める高齢化率は57%にもなるという。

 レストランやカフェはない。頴川(えがわ)駿介さん(28)ら移住してきた若者らが古民家(旧藤原邸)を活用して「久賀島観光交流拠点センター」を運営している。そこで五島うどんなど地元食材を使った定食を昼食にいただき、若者らの熱意を感じた。

 商店は久賀診療所の隣で、黒須久美子さん(49)が運営する「久賀島あおぞらマーケット」のみ。昨年まで地元の高齢女性が店を開いていたが、体調不良で閉店。島全体が買い物難民になると危機感を抱いた黒須さんが、昨年末に開店した。黒須さんは3年前、診療所に赴任した医師の夫とともに島に移住し、看護師の経験を生かし、高齢者の見守りなどに尽力している。

 頴川さん、黒須さんらの取り組みを見て、高齢化問題をどう解決していくのか、これからの日本の姿を考えさせられた。

 文・写真 鈴木賀津彦
 
(2019年10月11日 夕刊)

メモ

◆交通
久賀島・田ノ浦港へは福江島・福江港からフェリーなど定期船が出ている。
福江島には福岡空港、長崎空港から福江空港へ飛行機で行くか、長崎港、博多港などから福江港へフェリーで。

◆問い合わせ
五島市観光協会=電0959(72)2963

おすすめ

久賀島観光交流拠点センター昼食

久賀島観光交流拠点センター昼食
久賀島あおぞらマーケットの黒須久美子さん

久賀島あおぞらマーケットの黒須久美子さん

★ガイド付き五島のキリシタン文化を訪ねるツアー「五島列島キリシタン物語 久賀島・奈留島編」
福江港に午前8時50分集合、定期船で久賀島、隣の奈留島に渡って観光し、午後2時50分に福江港に戻る。
交通費、昼食代込みで大人1万2000円。
申し込み・問い合わせは五島市観光協会へ。

★久賀島観光交流拠点センター
久賀島のおすすめスポットなどを展示、紹介する。
昼食は1000円(3日前までに要予約)。
電0959(77)2115

★久賀島あおぞらマーケット
他に店はないので立ち寄ってみて、黒須久美子さんに、島の様子を聞いてみよう。
月曜午前中は休むが、ほぼ毎日営業。

★久賀島レンタカー
島の環境保護を考慮して、電気自動車のレンタルがある。
台数に限りがあり、予約を。
電気自動車は3時間レンタルの場合、3850円プラス電気代500円。
電0959(77)2008

歴史・文化の宿泊情報

一覧

    現在この情報はありません。

歴史・文化のツアー情報

一覧

    現在この情報はありません。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外