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志布志

志布志 鹿児島県 薩摩武士の「志」薫る

岳野山の山頂は360度の大パノラマ。眼下に広がるのは志布志市街や志布志湾

岳野山の山頂は360度の大パノラマ。眼下に広がるのは志布志市街や志布志湾

 大阪南港を夕方出航した寝台フェリー「さんふらわあ さつま」は翌朝、鹿児島県の東端にある志布志(しぶし)港に着岸した。このフェリーは就航間もなく、客室の多くが個室仕様でシャワー・トイレも付設されている。快適な船旅に、「トラックを運ぶ船」という記者のフェリーへのイメージは一掃されてしまった。港の住所表示をふと見ると、「志布志市志布志町志布志3292番地」。志布志が3つ!?覚えやすい。

 志布志湾一帯は、日南海岸国定公園の一角を占める景勝地だ。まず同市地方創生総合アドバイザーの坂本貴弘さん(40)の案内で、「百年の森 岳野山(たけのやま)」(標高274メートル)に上った。市役所のすぐ北側にあり、頂上まで車でひとっ走り。小高い丘といってもいいのだが、着いてみて驚いた。周囲にはさえぎるものがない360度の大パノラマが展開し、天候にも恵まれて、市街や志布志湾はもちろん、霧島連山、桜島、開聞岳、都井岬など南九州一円の景観が一望の下に収まってしまったのだ。絶景とは、このことか。

 山頂は、笠祇(かさぎ)神社を取り囲むように十二支の石像が並んで独特の雰囲気を醸し出し、パワースポットの趣も。坂本さんによると、ガイドブックにも詳述されておらず、知る人ぞ知るスポットだという。

日本遺産に認定された武家屋敷群「麓」の天水氏庭園。自然の岩盤に海石を使って築かれている

日本遺産に認定された武家屋敷群「麓」の天水氏庭園。自然の岩盤に海石を使って築かれている

 市街地に下りると、2019年に認定されたばかりの日本遺産「薩摩の武士が生きた町~武家屋敷群『麓(ふもと)』を歩く~」の町並みが残る。同市で中核となる志布志城跡は、南九州特有のシラス台地に築かれた山城で、急な崖に囲まれた城郭跡が連なる。観光ガイドの米元史郎さん(68)によると「シラスの地質は急崖を生みやすいので、防御用の城造りに向いている」という。

 うっそうとした杉林に覆われた上り道は、狭くて急で薄暗いが、15分ほどで本丸跡に上がると突然に視界が開けた。武家屋敷群から港まで直線的に見通すことができ、この地に築城された理由がよくわかる。

 「麓」は山城の周辺に配置された武家屋敷群のこと。門と玄関の間に生け垣や庭などを置いて、何かあれば即座に侵入者に対応できるようになっており、町全体が外城(とじょう)の役割を果たす。志布志城跡の周りを歩けば、当時の面影を残す庭園や屋敷が散在し、薩摩武士の生きざまが伝わってくるようだ。

 志布志湾沿いの道は、どこからでも湾全体が眺められて飽きない。特にダグリ岬からの夕景は素晴らしかった。すぐ近くにあるのが弁天島。干潮になると陸続きになる小島で、「地元でも知られていない」という言葉に誘われ、徒歩で渡って、登りつめたら厳島神社の分社があった。

志布志湾を望むタラサの湯の露天風呂=いずれも鹿児島県志布志市で

志布志湾を望むタラサの湯の露天風呂=いずれも鹿児島県志布志市で

 夜は「タラサの湯」という海水の風呂に漬かった。

 古くから南九州の交易の拠点として発展した志布志は、観光には縁が薄いと聞いていたが、随所に知られざるスポットがあり、楽しむことができた。

 もう1つ、あまり知られていない名産がウナギ。ほそぼそと始まった養殖は、今や全国トップクラスの生産量に。20年以上もウナギと寝食を共にしてきた鰻師(うなぎし)の加藤尚武さん(49)は「安心で安全でおいしいウナギを食べてもらいたいという一念が今につながった」と自任する。「こころざしの町」を標榜(ひょうぼう)する志布志の心意気を垣間見た気がした。

 帰路は、宮崎空港へ向かうため、JR日南線の終着駅「志布志」から一両編成のワンマンカーに乗り込んだ。この駅の住所は「志布志市志布志町志布志2丁目28番地11」。志布志は記憶に残る地名になった。

 文・写真 水野泰志

(2020年3月27日 夕刊)

メモ

◆交通
志布志へは、海路は大阪南港からフェリーで15時間。
空路は中部国際空港から宮崎空港か鹿児島空港へ。
宮崎空港からはJR日南線で2時間50分。
鹿児島空港からはバスで1時間40分。
志布志市内の移動はレンタカーが便利。

◆問い合わせ
志布志市総合観光案内所=電099(472)2224

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★タラサの湯
全国でも珍しい海水を引き込んで沸かした海水風呂。
自然療法のタラソテラピー(海洋療法)効果が得られるという。
大黒リゾートホテル内にあり、露天風呂から志布志湾を一望できる。
日帰り入浴もできる。
料金など詳細は、同ホテルのホームページで。
電099(473)0001

★丼や和華・天然鱧(はも)入り志布志湾三昧(ざんまい)丼
志布志湾でとれたハモの天ぷらに、シラスやウニをたっぷり盛った丼。
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1100円。
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高さ30センチもあるかき揚げがそびえ立つ丼。
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※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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