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【滋賀】「出会い」本年もご報告 人、まち、食、風景… 滋賀県近江八幡市

ジャンル・エリア : 乗り物 | 文化 | 近畿  2023年01月05日

八幡堀(上)・鳥居と白雲閣(下)=いずれも近江八幡市で

八幡堀(上)・鳥居と白雲閣(下)=いずれも近江八幡市で

 昨秋、滋賀県近江八幡市に行ってきました。長い歴史を誇り、人気の観光スポットの八幡堀があれば、かつて近江商人たちの信仰を集めた日牟禮(ひむれ)八幡宮もあり、見どころの多いまちです。

 八幡さまの前には、明治に八幡東学校として建てられた「白雲館」という名建築が。神社の鳥居越しに、西洋風の建物が見える光景は、この国ならではでしょうね。

 -などとお伝えしようかと思いつつ出かけたのですが、いや、困りました。とにかくあちこちからマイカーが来ていて、東海地方のナンバーもたくさん見かけました。私がここで紹介するまでもなく、大人気のまちなのです。

 これはあかん。というのでちょっと別の話を書きます。

 近江八幡には名古屋から、JR東海道線で行きました。途中、彦根駅で下車しまして彦根市で暮らしている作家とおしゃべりを楽しみました。

 その作家と入ってみたのは駅から少し離れた喫茶店で、アイスコーヒーに添えられたコースターには「Since2002」とありました。

 おお、今年で20年なのか(昨秋のことです)。年配のマスターにお祝いを述べると「なんで分かりました?」。それは、ほら。コースターを指さしますと、ダンディーなマスターとキッチンの女性が口々に「あっ、今日や!」。

 聞けばその日、10月1日がまさに開店の記念日だとか。これは楽しい奇遇です。私、店を辞去した後、おめでたい名前を持つ地酒「喜楽長」の小瓶を買い求め、マスターにプレゼントしてきました。

 さらにその少し前のこと。岐阜県の大垣駅あたりから、車内でアナウンスをしている男性の車掌の声が実に良く、しかも耳に快い話し方だなと気がつきました。

 車掌さんが車内を巡回する折に、話しかけてみました。先ほどからアナウンスをしている方は、あなたですか?

 「はい」と若い車掌さん。そうですか、とても良い声と話し方だと思っていました。

 「ありがとうございます。励みになります」と、笑顔で返されます。感じがいいな。さらにこうお伝えしました。皆さんのおかげで、私たちはあちこちに出かけられます。ありがとうございます。

 すると、車掌さんはすぐにこんなふうに言われました。「私たちの方こそ、皆さんがあちこちに出かけてくださるので、仕事ができています。ありがとうございます!」

 ◇  ◇  ◇ 

 旅先の楽しみは、おいしいものを食べることや、美しい風景を見ることにもありますけれど、それと同じほど私の心に残るのは、出会った人と交わしたこんなちょっとした言葉のやりとりなのですね。

 そんな思い出をつくるのがうれしくて、今年もあちこちうろうろしてご報告します。どうか本年も、お付き合いをお願いします。 (三品信)

(中日新聞夕刊 2023年1月5日掲載)