【本文】

  1. トップ
  2. お出かけニュース
  3. 【岐阜】コロナ前の光景戻った 長良川で鵜飼開幕

【岐阜】コロナ前の光景戻った 長良川で鵜飼開幕

ジャンル・エリア : 乗り物 | 動物 | 岐阜 | | 文化 | 歴史  2023年05月12日

夕焼けが水面を彩る中、出発する観覧船

夕焼けが水面を彩る中、出発する観覧船

 初夏の長良川に、コロナ禍前の光景が戻ってきた。11日、昨年に続いて通常通りの開幕を迎えた岐阜市の長良川鵜飼。新型コロナウイルスの感染拡大以降、たび重なる苦難を乗り越えてきた関係者は等しく、「鵜飼開き」を心待ちにしていた。好天に恵まれた初日から多くの観光客が訪れ、一帯は活気づいた。(中川耕平、森健人、大高千奈)

「1発目は緊張」船頭も武者震い 長良川鵜飼

 「心がきりっと引き締まる思い。今年も頑張っていきます」。運航の無事を願う神事の後、鵜匠代表の杉山雅彦さん(62)は力を込めた。コロナの感染症法上の分類が5類になり、乗船時の検温やアルコールによる手指消毒も原則なくなった。船に設置されていたアクリル板の仕切りも撤去。本来の姿に戻り、杉山さんも「われわれとしても距離感を縮められるのでほっとしている」と頬を緩める。

 

 開幕を待っていたのは観覧船の船頭も同じ。足立崇徳(たかのり)さん(23)と磯田直旺(なお)さん(24)は「新しいシーズンの一発目は緊張する」と武者震い。今季は船をこぐときに限ってマスクを外すという。「息苦しいこともあったけれど、今季は楽にこげる」と笑みを浮かべた。

 「コロナ禍では乗船人数の制限が多く寂しかった。今年は大勢の人に楽しんでもらいたい」と期待を膨らますのは、郡上市の船大工田尻浩さん(63)。3月に新造された鵜匠を乗せる「鵜舟」の製作に関わった。

 
観覧船で食事を楽しむ人たち

観覧船で食事を楽しむ人たち

 長良川鵜飼にはコロナ禍で落ち込んだ観光の起爆剤としての期待もかかる。市鵜飼観覧船事務所近くの土産店「名産館」の店主、堀よしこさん(74)は「今年こそ元に戻らないといけない」と意気込んだ。

 午後6時をすぎると、観覧船は次々と出航。川辺に腰掛け、行き交う船をながめる人々の姿も。英国から家族4人で初めて岐阜に訪れたというハスラー・マーガレットさん(73)は乗船前から興奮した様子。「鵜飼はガイドブックで知った。日本の伝統的な漁を見られるのは楽しみ」。毎年、開幕日と閉幕日の鵜飼を長良川右岸から眺めているという岐阜市の長屋いね子さん(72)は「心地よい風とかがり火の音を感じた」と風物詩を堪能していた。

 
かがり火の下、鵜を操りアユを捕る鵜匠

かがり火の下、鵜を操りアユを捕る鵜匠

闇夜に光る手綱さばき 小瀬鵜飼

 関市の長良川で11日、1000年以上の歴史を誇る伝統の小瀬鵜飼が開幕した。10月15日まで。

 初日は観覧船5隻が70人を乗せて出航。鵜飼開きを知らせる花火を合図に、鵜舟と観覧船が平行に下る「狩り下り」が始まった。闇夜に包まれ、静まり返る長良川で、観覧客はかがり火の下で手綱をさばく鵜匠と鵜の動きに見入っていた。

 鵜匠代表で関遊船社長の足立太一さん(68)は「コロナ禍前に戻る足がかりの年にしたい。鵜匠と船頭が力を合わせて、多くのお客さんに楽しんでもらえるよう頑張る」と意気込んだ。(秋田耕平)

 
お披露目された木造観覧船「吉祥丸」=いずれも岐阜市の長良川で

お披露目された木造観覧船「吉祥丸」=いずれも岐阜市の長良川で

新造の観覧船が進水式

 鵜飼開きに先立ち、新造された観覧船の進水式があった。岐阜市は毎年観覧船1隻を新調しており、新たな船は「吉祥(きっしょう)丸」と名付けられた。

 式には鵜匠や市の関係者らが出席。盛り塩や酒で清められ、運航の無事を祈願した後に除幕され、屋根に記された船名が披露された。市鵜飼観覧船事務所によると、「吉祥」には「良い前兆、めでたい兆し」といった意味があるといい、新型コロナウイルス禍の収束への願いを込めた。

 定員は15人。今季は10人乗りの乗り合い専用として運航する。昨年導入し、好評だった高級観覧船と同様に土足で利用できる。インバウンド(訪日客)の需要を見込み、今後は同仕様の船を増やしていくという。