ジャンル・エリア : グルメ | スポーツ | 石川 | 自然 2023年05月18日
先週に引き続き、金沢市の兼六園に来ています。園外に桜の木が何本もあって、その1つは「佐藤桜」という名がついています。前にもお伝えした通り、名古屋市から金沢まで走っていた旧国鉄の路線バスの車掌・佐藤良二さんが私費でバス路線の沿線に桜の苗を植え続けた功績を、今に伝える大切な木なのですね。
4月23日朝7時すぎ、1人の男性が疲れ切った顔でこの木へと駆け寄りました。名古屋城から遠く兼六園まで250キロの距離を、わずか36時間以内で駆け抜けるさくら道国際ネイチャーラン2023のランナーです。
佐藤桜に触ることが完走の証しで、宮城県から参加した早坂研さん(46)が1位です。大会の会長で岐阜県郡上市の日置敏明市長から、優勝者の花輪を頭上に乗せられると、早坂さんは感泣し、見ていただけの私もついついもらい泣きです。優勝記録は26時間ちょうどでした。
ゴール地点には応援の人や大会関係者がランナーたちを待ち受け、その中に金沢市の村山卓市長の姿もあります。ネクタイも、胸元のポケットチーフも桜色で統一している村山市長。おしゃれだなあ。
2人の市長さんが関係者にスピーチするのを聞いたら、ちょっと出かけましょう。
金沢駅から電車で2つ目、IRいしかわ鉄道の森本駅にやって来ました。歩いて5分ほどの場所に荒木建設という会社があって、その駐車場がエイドステーション、つまりランナーたちの休憩所として提供されているのでした。
10人ほどいるスタッフは、みなボランティアです。その1人、大島雄治さんは大会にたびたび出場し、2015年には3位になった強者ですが「今回は自分は走らないで、ランナーのサポートですよ」と笑顔で語ってくれました。こんな人たちがいるからこそ大会が開催できるのですね。
コース中に48カ所あるエイドのうち、ここが最後。ゴールまであと約7キロです。たどり着いたランナーたちは「日中と夜の寒暖差が20度くらいもあって、夜は本当に寒かった」としみじみ語り、スタッフの用意した飲み物やスイカで水分と栄養を補給。わずかな休息を取った後は、佐藤桜を目指して再び走り始めます。かっこいい。
そして午後5時前。夕刻の兼六園に戻ると、最後の走者2人が制限時間のぎりぎりで到着しました。励まし合ってここまで来たのでしょうね。その姿を見つつ、応援にきてよかったと思いました。
そろそろ帰りましょうか。金沢を去る前に、ランナーの健闘を祝って乾杯したいな、と思います。目指すのは金沢駅構内にあるイタリア料理とカフェ、スイーツの人気の店「カンパーニュ クチーナ&バール」。ビールやワイン、レモンサワーなど、お好きな飲み物と日替わりおつまみのセットを2000円で出してくれるというありがたいお店です。
コロナ禍がやや落ち着き、駅にも観光客が増えました。来年もまた、この大会を見に来たいものです。皆さまも、ぜひお出かけを。 (三品信)
▼ガイド さくら道国際ネイチャーラン2023のコースマップや公式成績などは、大会のホームページからご覧いただけます。金沢駅の「カンパーニュ クチーナ&バール」は午前7時に開店、閉店は原則として日曜から木曜が午後10時半、金曜と土曜は午後11時。早朝から夜遅くまで営業していて、旅行者にはたいへんありがたいお店です。スタッフの皆さんも親切ですよ。(電)076(224)0141。
(中日新聞夕刊 2023年5月18日掲載)