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【三重】あらやだ ゆるかわ電車 北勢線に乗る 三重県

ジャンル・エリア : グルメ | 三重 | 乗り物 | 鉄道  2023年08月03日

3種類の線路を渡る全国唯一の踏切

3種類の線路を渡る全国唯一の踏切

 何の変哲もない踏切に何の変哲もない電車がやって来た光景のようですが、実は少し変わっていまして、ここは三重県桑名市の桑名駅近くの踏切。近鉄名古屋線とJR関西線、そして三岐鉄道北勢線の3路線を渡ります。

 このうち近鉄は線路の幅が新幹線と同じ1435ミリで、これが国際標準です。JRは少し狭い1067ミリ。さらに北勢線は762ミリと狭くて、この3種の鉄道を渡る踏切は全国でここだけとか。

 写真に見えるのが北勢線の電車です。では今日は、この北勢線に乗ってみましょう。

 桑名駅から歩いてすぐそばの西桑名駅から、いなべ市にある阿下喜(あげき)駅まで全13駅、20.4キロの距離を、およそ50分かけて走る路線です。全国でも今では3社しかない「軽便鉄道」です。ちなみに残りの2つは、同じ三重県の「四日市あすなろう鉄道」と富山県の「黒部峡谷トロッコ電車」です。

 西桑名駅から乗った電車は4両編成。先頭車両に座ってみると冷房装置がなく、窓が開けっ放しです。今、特急や新幹線などは窓が開きませんから、実に貴重な体験です。私以外に乗客はなく、まるで貸し切りみたいですよ。

 最高速度は時速40キロほどでして、緑豊かな田園風景の中をゆるゆる走ります。窓の外からは、セミの大合唱と、草いきれが車内に流れ込んできます。夏、ですね。電車に驚いたスズメの群れがさっと飛び立ちました。

 この電車は、西桑名駅から10駅目の楚原(そはら)駅止まりです。運転士さんにお礼を言うと、「今日はどこから?」。はい名古屋からです。この路線の記事を書くために来ました。「ぜひお願いします。北勢の人たちには大切な路線です」と運転士さん。こんな会話ができるのは、短いとはいえ、電車の旅だからこそです。

 楚原駅から歩いて15分、この欄で先々週、写真を掲載した「ねじり橋」の下に到着しました。現存するコンクリートブロック製の橋では唯一といわれる「ねじりまんぽ」構造の橋です。そこからもう少し歩くと、「めがね橋」。いわゆる眼鏡橋は全国各地にありますが、こちらの橋は、ねじり橋と同じコンクリートブロック製で、これまた大変珍しいものだとか。

変わった名前、変わった外観のパン屋さん

不思議な名前の高級パン屋さん

 しばらく橋を眺めたら再び北勢線で、終点の阿下喜駅へ向かいましょう。駅前には、あれあれ、ちょっと変わったお店が。このごろ流行している不思議な名前の高級パン屋さんの一つです。もし「パン」と書いてなければ、いったい何のお店かなと思う「あらやだ奥さん」です。

 いろいろなサンドイッチやソフトクリームをお店の中でいただくこともできますが、テイクアウトしてお日さまの下で食べましょうか。小さな鉄道の旅、まだまだ楽しみがありそうです。 (三品信)

 ▼ガイド この回は7月27日掲載の予定でしたが、1週遅くなりました。どうかお許しを。北勢線の西桑名駅から阿下喜駅までの運賃は大人510円。北勢線と、同じ三岐鉄道の三岐線で使える「三岐鉄道1日乗り放題パス」(大人1200円、子ども600円)もあります。詳細は三岐鉄道のホームページで。パンの「あらやだ奥さん」は桑名市に本店が、愛知県愛西市に愛西店があります。私が訪れたのはいなべ店((電)0594・87・6666)で、ハム野菜チーズサンド(350円)と、梅香るさっぱりチキンサンド(390円)を買いました。おいしかったですよ。

(中日新聞夕刊 2023年8月3日掲載)