2009年01月19日
自宅近くの料理店でのこと。テーブルの向こうで知人が目を丸くした。「あれ、あの人は…」。記者の肩越しに固まっている視線をたどると、二つばかり離れたテーブルにドイツ連邦共和国首相アンゲラ・メルケル閣下がお座りではないか。
白ビールのグラスを傾けながら与党幹部と懇談中だ。金融サミットでワシントンに旅立つ前夜のこと。さぞかし重要な会談に違いないと、日本なら店の前にカメラの放列ができるところだ。だが店の中も外も静かなもの。ざわめく客は皆無だ。ある女性がサインを求めた以外、ちらちら見やる視線すらない。
店主が普段着で接客するベルリンの大衆店だ。そんな店で一国の首相が食事を楽しんでいる。近くのスーパーで買い物している目撃情報もあった。「国民目線」どころではない。まさに一国民として政治家も暮らす。この国の懐の深さを感じた。 (三浦耕喜)