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ロンドン 英国の多様性表と裏

2012年07月20日

 「自分たちでさえ、英国人がどんな国民なのか分からない」

 知人の白人男性はちょっと誇らしげに言った。英国は多文化主義を掲げ、かつての植民地などからも多くの人々を受け入れた結果、特に都市部に住む人たちの肌の色は千差万別。知人の言葉は「英国の多様性」をアピールするものだった。ただ、こちらは「そうかもしれないが、米国ほどではないのでは」と話半分で聞いていた。

 ところが、ニューヨークからロンドンに移ってきた2人の友人が偶然にも同じ話を披露した。「ニューヨークは人種は多くても、白人は白人、黒人は黒人と一緒にいることが多い。ロンドンは白人も黒人も一緒にいる」。確かに支局の近くのパブでも、いろんな肌の人がビール片手に語らっているのは極めて普通の光景だ。

 「多文化主義は米国よりも英国の方が定着しているのか」。そんな考えを信じかけていたころに開かれたエリザベス女王の在位60年を祝う行事。バッキンガム宮殿が舞台の無料コンサートや王族が乗った馬車のパレードでは、通りは、はるかかなたまで人で埋まっていた。

 しかし、無数の英国旗ユニオンジャックが振られる中、よく見ると、ほとんどが白人。パブで見かけたあの光景はそこにはない。英国の別の姿を見た気がした。 (有賀信彦)