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ペンサコラ 終わりなき原油被害

2010年10月19日

 米史上最悪の原油流出事故が起きたメキシコ湾岸の観光地・フロリダ州ペンサコラを取材で訪れた。一時、醜い原油の塊が点在した白砂の海岸は、地元の人々の懸命の清掃作業で美しい浜辺に戻っていた。しかし、観光客は戻らず、閑古鳥は鳴いたままだ。

 清掃は英石油大手BPが十数社に委託。流出事故で職を失ったサービス業の労働者らが、時給わずか6~10ドルで炎天下の砂浜を手作業で清掃していた。

 バイトの募集事務所を訪れた。応募にはまず、危険物取り扱い講習代の125ドルが必要と言う。原油のせいで失業した彼らからさらに金を取ろうというのか。採用担当者の男性は「理不尽だと思うが僕も雇われの身。それでも毎日50人が応募に来る。こんな仕事でも皆ほしくて必死なんだ」とうつむいた。

 「できるだけ仕事を回したいが、もう原油は消えた。いつまで募集できるか分からない」。男性の複雑な表情がずっと焼きついている。

 (加藤美喜)