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ワシントン 人種差別 根深い連鎖

2011年06月02日

 米国の人種問題は根が深い。「米歴史博物館」「自然史博物館」など首都ワシントンに立ち並ぶ入場無料の「スミソニアン博物館」で受付のボランティアをしていた妻も人種差別を体験した。

 見学に来た夫婦らしい黒人男女とのやりとり-。男性から展示内容を質問され、応対していると、女性が脇から「向こうの人(受付の白人女性)に聞いた方がいいわよ」。かまわず男性に説明を続けたところ、女性は「中国人なんかに聞くだけ無駄じゃないの」。

 中国人や中国系に間違われることはよくあり妻も気にならないという。ただ、事実を告げようと思い、「私は日本人のボランティアです」と答えると、女性は態度を豹(ひょう)変させ、「大変失礼なことを口にしました」と謝罪したそうだ。

 「非礼を素直にわびるのは立派だけど複雑な気持ち」と妻は振り返る。中国人か、日本人か、ではない。3月下旬発表の米国勢調査によると、アジア系の人口は2000年に比べ43.3%増加し、白人(5.7%)、黒人・アフリカ系(12・3%)の増加率を大きく引き離す。

 人口急増中のアジア系に職を奪われるという被害者意識の表れであり、ボランティアと知って女性は謝ったのだ。差別の痛みを知る黒人が“加害者”だけに、問題の複雑さ、深刻さがうかがえる。(嶋田昭浩)