2012年04月09日
「みんな怒ってるさ。いや、悲しんでる…」。核開発の疑惑に絡み、欧米の経済制裁を受けるイラン。首都テヘランの低中所得者の多い地区で、食肉店の店員(53)が嘆いた。
制裁で物価上昇に拍車がかかり、同店も鶏肉を1カ月弱で2割も値上げ。貧しい人々は肉が買えなくなり、店の客足は遠のいた。
店には、5日前の鶏肉が、買い手がなく売れ残っていた。「制裁で苦しんでいるのは普通の人たちだ」と、別の店員(40)は言う。
国際社会では悪者扱いのイランだが、庶民は日々の暮らしを守るのに懸命だ。日本に親しみを感じる人も多い。「おしん」が大人気となったお国柄だ。
「日本はヒロシマやナガサキの原爆で大被害を受けたが、発展を遂げた。昨年はツナミに遭ったけど頑張ってる。われわれも制裁を乗り越えられるさ」と建設業の男性(27)。
市民ら十数人に聞いたが、全員が核開発は「自国の権利だ」と主張。「平和目的」という政府の説明を信じる人が目立ち、怒りの矛先は制裁を決めた欧米へと向かっていた。
本心なのか、相手が外国人記者だから政府の主張に沿う発言をしたのかは分からない。
ただ、経済制裁でイランの体制を揺さぶり、核開発で譲歩を引き出す-。そうした欧米式の試みは、現段階では成功していないように見える。 (今村実)