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ベルリン 受け継ぐ加害の自覚

2015年03月10日

 戦後70年の今年、ドイツのワイツゼッカー元大統領が1月末に亡くなった。戦後40年の節目には「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」と演説し、ホロコースト(ユダヤ人らの大虐殺)を犯したドイツの加害責任を直視するよう訴えた。戦後ドイツの良心を象徴する人物が逝ってしまった感がある。

 元大統領死去の5日前、メルケル首相は、アウシュビッツ強制収容所の解放70年に合わせてベルリンで開かれた式典に出席していた。極限の体験を語った元収容者に続いて登壇したメルケル氏はこう述べた。

 「アウシュビッツは、ホロコースト、つまりドイツが犯した文明への背信の象徴です。私たちドイツ人はこれを深く恥じています。人道に対する犯罪に時効はありません。過去を記憶し続けることは私たちの責務なのです」

 敗戦時に25歳で、ナチス外交官だった父を持つワイツゼッカー氏は自身の痛切な体験から反省を語った。戦後生まれのメルケル氏にナチスの犯罪をめぐる直接の責任はない。だが「加害の自覚」を伝え続けるべきだとの意志は、確実に受け継がれている。 (宮本隆彦)