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ワシントン 法王人気と政治嫌悪

2015年11月12日

 ローマ法王フランシスコが米国に滞在した6日間、米メディアはその動静を詳細に報じた。カトリック教徒は米国の全人口の2割ほどだが、国民の熱狂的な歓迎ぶりには、宗教の隔てはなかった。

 「それはね、法王は裏表がなく、誠実だからだよ。彼は貧しい人を支援し、自分もつましい暮らしをしている」

 法王が演説したワシントンの米議会近くで、地球温暖化対策を訴えていた元生物学者のスティーブさん(64)は法王人気の理由を語った。スティーブさんはプロテスタントの一派のクエーカー教徒だが、法王に共感を覚えており、「議員連中は言うこととやることがまるで違う」と議事堂を指さした。

 すると、連れの元外科医ダグラスさん(64)も「議会は大企業に牛耳られているんだよ」と渋い表情を見せた。

 「エスタブリッシュメント」と呼ばれる既成政治家への嫌悪感が、米国民の間に広がっている。逆に、次期大統領選で支持を集める候補者は、不動産王トランプ氏をはじめ政治歴のない「アウトサイダー(部外者)」たちだ。法王人気とつながるものがある。 (青木睦)