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パリ 通りの人が消えた日

2016年02月08日

 あの光景が頭を離れない。パリの同時多発テロが起きた翌日、深夜、仕事を終え、ビルの重い扉を押し開けて通りに出た。パリ支局の入るビルはシャンゼリゼ通りに面している。

 この世界一有名な通りは普段、夜遅くまで多くの観光客や若者でにぎわう。だが、この日は違った。薄暗く、行き交う人の姿はなかった。

 赴任してから1年余。1月にもテロがあったが、こんな光景に一度たりとも遭遇したことはなかった。たった1人、通りを歩きながら体の底から湧き上がる言いようのない不安感に襲われた。

 あれから約1カ月。今、通りはいつもの喧噪(けんそう)を取り戻しつつある。恒例のライトアップとクリスマスマーケットがにぎわいに花を添える。市内では今月初め、犠牲者が出たカフェが再開した。

 「悲しくても前に進まなくてはいけない。にぎやかな街を取り戻したい」。常連だという男性は言った。被害に遭った近くのレストランも再開に向けて動きだしているという。

 人が、街が受けた「傷」は途方もなく深い。でも、今は前を向く強い意志に期待したい。暗く沈んだパリは見たくない。 (渡辺泰之)

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