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北京 暗闇が温める人の心

2016年02月05日

 12月になって北京の至る所でイルミネーションが輝く光景を見るようになった。クリスマスを祝う習慣が若者を中心に定着。にぎやかな音楽こそ流れていないが、夜の闇を照らす光を見ていると中国にいることを忘れてしまいそうだ。

 そう思いつつ、時折顔を出す日本料理店に行くと、店頭には「本日閉店」の表示。店内も真っ暗だ。不思議に思い店内に入ると、数人の客と店員が楽しそうに一緒に食事していた。閉店の理由を店員に問うと、電気代を払い忘れてしまい、一時的に店舗への送電を停止されたからだとか。

 「閉店ですが、できる範囲で何か作りますよ」。その言葉に甘えて暗闇の中で他の客らと一緒に夕食を食べることになった。冷蔵庫が使えなくなったためビールはややぬるめ。料理は店員が懐中電灯を片手に作った炒め物などだが、それで十分だ。

 暗闇で過ごす時間に人の心を和ませる効果があるのだろうか。なぜか店員や見ず知らずの客との会話も弾んだ。明るさもいいが暗さもいいかもしれない。すっかり満足して帰宅する途中、また街のイルミネーションが目に入った。 (秦淳哉)