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桐生

桐生 群馬県 織物の都 レトロな風情

桐生織物記念館の資料展示室に並ぶ鮮やかな桐生織

桐生織物記念館の資料展示室に並ぶ鮮やかな桐生織

 鮮やかな金色の布地に、行き交ういにしえの人々の姿が絵画のように浮かび上がっていた。桐生織物記念館内の資料展示室。伝統的工芸品「桐生織」の技法の一つ「緯錦織(よこにしきおり)」の袋帯に施された絵柄に「織都(しょくと)」の技巧が凝縮されているように思えた。

 織物の生産地として1300年余りの歴史を誇り、京都・西陣と並ぶ機業地として栄えた桐生。近年は、現存する織物関連施設を見て、学ぶ「産業観光」の町として注目されている。

 最初に立ち寄った同記念館は1934年、桐生織物同業組合の事務所として建てられた。スクラッチタイル張りの外壁がモダンな雰囲気を醸し出す国登録有形文化財。2階の資料展示室はかつて講堂だった。

 「手織り体験していきませんか」。展示室の案内を担当するキャッシュ貴美江さん(62)と石島弓子さん(56)が声を掛けてくれた。見学者は展示品の一つの足踏み式の高機(たかはた)で手織り作業を体験することができる。

 椅子に座り、高機に向き合う。踏み木に足を乗せ、経糸(たていと)の間に木製の杼(ひ)(シャトル)に巻かれた緯糸(よこいと)を通し、筬(おさ)と呼ばれる器具を手前に3回打ち込む。加減をつかみかねていると「もっと力を入れてもいいですよ」。キャッシュさんの言葉に、少し力を強める。トン、トン、トン・・・。緯糸が、布の一部になった。何も知らなかった織物の世界を、少し身近に感じられた。

「矢野園」店舗の前をゆっくりと走る「MAYU」

「矢野園」店舗の前をゆっくりと走る「MAYU」

 2人に見送られ、町歩きに出た。記念館を出ると、珍しい8輪駆動の小型バスが止まっているのに気付いた。愛称だろうか、車体にはローマ字で「MAYU」と書かれている。記念館を背景に写真に収めた。

 町を南北に走る本町通りに出た。この日の気温はちょうど30度。しきりに汗をぬぐいつつ、通りを10分ほど歩く。

 古めかしい「キリンビール」の看板が掲げられた「矢野園」の店舗が見えてきた。明治から昭和初期の建物が多く残る「桐生新町重要伝統的建造物群保存地区」の入り口だ。

 店舗裏手には、明治、大正期に建てられた塩蔵や煉瓦(れんが)蔵が並ぶ。今は市の施設「有鄰館(ゆうりんかん)」としてイベントスペースになっている。塩蔵では、地元の水彩画家、川田敏夫さん(67)が作品展の真っ最中。「蔵の木目の壁に飾ると絵が映えるんだよ」。川田さんは満足そうに目を細めていた。

特徴的な形状のノコギリ屋根工場=いずれも群馬県桐生市で

特徴的な形状のノコギリ屋根工場=いずれも群馬県桐生市で

 有鄰館でもらった案内図を手に、保存地区をさらに歩く。路地に入ると、大谷石造りの建物が現れた。屋根の北西方向に採光面があるノコギリ屋根工場だ。案内図には大正期に建てられた織物工場とある。桐生にはこうしたノコギリ屋根工場が現在も200棟余り残っている。

 歩き続けると、先ほど気になっていたMAYUの車庫を見つけた。訪ねると、市から運行を委託されている企業「桐生再生」の社長、清水宏康さん(71)に話を聞くことができた。

 MAYUは最高速度が時速19キロの低速電動バス。絹製品の原料となる繭にちなんだ名称だ。土日祝日に市内を走っており、無料で利用できる。「せっかくだから乗っていってよ」。旅の終わりに、清水さんと一緒に乗車した。吹き抜ける風は心地よく、暑さを忘れた。ノコギリ屋根工場など、歩いて巡った街の風景がゆっくりと眼前を通り過ぎる。「一度訪れると、桐生にはまって何度も足を運ぶ人が多いよ」。清水さんの言葉に思わずうなずいた。

 後日、川田さんから手紙が届いた。封筒には川田さんの絵が印刷された3枚のポストカード。夕暮れの街の風景に、小さくMAYUも描かれていた。織都の情景が目に浮かんだ。

 文・写真 大久保謙司

(2018年6月15日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
桐生へはJR東京駅から上越・北陸新幹線で高崎駅へ。
両毛線に乗り換え約45分。
東武伊勢崎線浅草駅からは、特急で新桐生駅まで約100分。

◆問い合わせ
桐生市観光交流課=電0277(46)1111

おすすめ

群馬大工学部同窓記念会館

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ひもかわうどん

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★群馬大工学部同窓記念会館
桐生高等染織学校の校舎として1916年に建てられた。
近年はNHKの連続テレビ小説「花子とアン」などドラマ、映画のロケ地としても知られる。
平日の午前9時~午後4時、日曜と第1土曜の午前10時~午後3時は講堂など内部を見学できる。
入場無料。
群馬大理工学部庶務係=電0277(30)1015

★ひもかわうどん
桐生名物の幅広のうどん。
仕事に忙しい女性が調理の手間を省くため、麺を幅広に切ったことが由来という説がある。
市内でうどんを扱う店は100余りあるが、そのほとんどで提供されている。
桐生市観光交流課=電0277(46)1111

★桐生市近代化遺産絹撚(けんねん)記念館
1917年に模範工場桐生撚糸合資会社の事務所棟として建てられた。
群馬県最古級の洋風石造建築物とされる。
桐生の郷土資料を展示。
電0277(44)2399

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