ジャンル・エリア : 愛知 | 文化 | 歴史 2018年08月22日
1934(昭和9)年に「蒲郡ホテル」として開業した蒲郡クラシックホテルが、大正期から蒲郡観光の中心的存在だった旅館「常磐館(ときわかん)」以来の歴史を掘り起こすプロジェクトを始めた。経営主体が変遷したこともあって過去を知る手掛かりがあまり残っておらず、関連資料などの情報提供を呼び掛けている。
蒲郡市竹島町の三河湾を望む丘の上に立つ同ホテルは、テレビ朝日系で放送中のドラマ「ハゲタカ」のロケ地にもなっている。
昨年11月、同じように戦前からの建物で営業する全国9ホテルで「日本クラシックホテルの会」を結成したのを機に、歴史を尋ねられることが増えた。「社員たちも興味を持ったが、いざ調べだすと分からないことが多い」と広報担当の山本尚生さん(50)。最近になって社内に「蒲郡クラシックホテルの歴史を探る会」を発足させた。
常磐館は、竹島周辺の観光開発を進めた名古屋の実業家・滝信四郎(1868~1938年)が12(明治45)年に創業した和風の料理旅館。菊池寛や谷崎潤一郎ら多くの文人が滞在して作品の舞台になり、82年に取り壊された。最盛期には周りに演芸場や動物園などさまざまな娯楽施設があったという。
蒲郡ホテルは、昭和初期に外国人観光客の誘致を目指した国策の一環として、国の融資と滝氏の寄付金で建てられ、常磐館グループが運営した。戦後も皇族が宿泊するなど蒲郡の象徴だったが、オイルショック後の不況で80年に廃業し、市へ売却。当時の従業員が備品や資料を持ち帰ったとも伝えられている。
87年に蒲郡プリンスホテルとして営業を再開。2012年に呉竹荘グループ(浜松市)へ譲渡されて蒲郡クラシックホテルに改称し、現在に至っている。
「歴史を探る会」は、収集した情報を基に過去の名物料理を復刻したり、記念誌などの形にまとめたりしたい考え。山本さんは「埋もれた歴史を次世代に伝えたいが、われわれの力だけでは成し遂げられない。ぜひ情報を寄せてほしい」と話している。(問)蒲郡クラシックホテル=0533(68)1111
(木下大資)